女性のライフスタイルの変化や社会進出により、晩婚化や結婚後も仕事を続ける女性が増えてきました。「今は仕事が優先」「子供は今でなくても…」と思い、仕事を続けていたら35歳を過ぎていた…ということも。
日本産婦人科学会によると、高齢出産とは、35歳以上の初産婦を指すと言われています。
35歳頃より出産率が減少し、39歳頃を境に急激に出産率が低下し、流産率が上回るようになってくるそうです。
それと反面、子供を持ちたいと希望する夫婦は、年々、年齢層が高くなっている傾向があるため、年齢の上昇とともに不妊治療の必要性や流産率が高くなっていくことを知っておく必要があります。
ここでは高齢出産における問題点、メリットやデメリットについて考えていきたいと思います。
~高齢出産の問題点~
高齢出産とは
一般的(日本産婦人科学会、国際産科婦人科連合)に言われる高齢出産の定義は、35歳以上の初産婦、40歳以上の経産婦と言われています。女性のライフスタイルの変化や社会進出、不妊治療の進歩により高齢での出産の割合は年々増え、今では約4人に1人が35歳以上で出産しているのです。(2017年出生総数に対する母体の年齢階層別比率より)
高齢での出産は問題があるの?
それでは、高齢での出産はどんな問題があるのでしょうか?
高齢になるにつれ、子供を産むために必要な卵子が老化していきます。さらに卵子は年齢とともに数が徐々に減少していき、個人差はありますが、50歳頃になるとほぼゼロに近い数になるそうです。高齢での出産の問題点は、肉体的な老化というより卵子の老化といえます。
卵子が老化するとどうなるの?
妊娠しにくくなるといわれています。また受精卵の染色体異常が増加するため、ダウン症などの染色体疾患の発生率が高まり、流産や早産を起こしやすいとも言われています。
※卵子形成時の染色体不分離の頻度の上昇などが原因の一つと考えられています。
現在では、高齢での出産が増えてきているため「出生前診断」という言葉をよく耳にすると思います。「出生前診断」とは、妊娠中に胎児に障害や問題がないか調べることです。
通常の妊婦検診で行われる超音波検査も胎児の心拍や発育を確認したり、胎盤、臍帯、羊水等に異常はないかをチェックしたりするので、広い意味では出生前診断にあたりますが、高齢出産にあたるから(胎児の染色体異常のリスクが高まる)ということで特別に受けるかどうか判断する出生前診断もあります。
一般的に35歳以上、もしくは胎児が染色体異常を患っている可能性が高いと診断された方が、「本人」の判断で検査を受けられます。
この検査では、主にダウン症候群(21トリソミー)、エドワーズ症候群(18トリソミー)などの染色体異常を検査することができます。検査にはいくつか種類があり、検査方法・時期・精度・費用などに違いがあります。
主な出生前診断の種類
― 母体血清マーカー検査/クワトロテスト ー
検査推奨時期は、妊娠15週から17週頃までです。
妊婦さんから採血した血液中の4つの成分を測定して、胎児がダウン症候群、18トリソミー、開放性神経管奇形である確率を算出するスクリーニング検査です。(確定診断ではない)
※上記3種類の染色体の変化以外の疾患は分かりません。
陽性結果がでた場合、診断を確定するためには、羊水検査などの検査を受ける必要があります。
ー 羊水検査 ー
出生前診断で羊水検査を受けられる時期は、妊娠16週以降になります。
腹部から注射針を刺して羊水を採取し、羊水中に含まれている胎児由来の細胞を調べ、胎児に染色体異常があるかどうか確定診断検査として実施されるのが通常の羊水検査です。羊水検査は他の検査法よりも母体と胎児に対してわずかながらリスクを伴う(約0.3%の確率で流産を引き起こす)、胎児に異常が見つかった場合、人工中絶につながる可能性があるということで、医師やカウンセラーとよく話し合う必要性があります。
出生前診断の検査は受けるべきか?
検査を受けるかどうかは妊婦本人とパートナーがよく考えて決めることです。予想外の結果が出ることもありますので、検査を受ける前に、検査の目的やメリット・デメリット、検査で分かること分からないこと(検査で分かる疾患は一部のものに限る)、結果によって起こりうる状況について理解しておく必要があります。
妊娠中に考えられる合併症のリスクは?
高血圧や尿たんぱくなどの症状がみられる妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病、胎盤異常(前置胎盤や常位胎盤早期剝離)をはじめとする、妊娠中における合併症にかかるリスクが高まります。これらの合併症は、早産や難産、帝王切開を引き起こす可能性があり、母体、胎児ともに様々な影響がでる可能性があることも知っておく必要があります。
高齢出産は男性にも関係があるのか?
女性にだけ問題があると思われがちですが、高齢での出産は男性にも密接な関係があると言われています。男性には明確なリミットは存在していませんが、精子は年齢とともに衰えていく(40歳頃から精子の質と量が低下)と言われています。そのため子供を希望する場合は、男性も年齢(妊娠適齢期)を意識していく必要があります。
高齢出産のメリットは?
年齢を重ねている分、仕事で鍛えた忍耐力や知識の豊富さ、精神的・経済的余裕のある方が多いようです。また不安が大きい高齢出産を乗り越えた後は、自分自身に自信を持つこともできます。ちなみに筆者は、高齢出産だったために、1人目を妊娠中、友人に先輩ママが多く参考になるアドバイスや力強いサポートを得ることができました。洋服のお下がりもいただき、大変助かりました。
妊娠生活に不安を持ちすぎず、ポジティブに高齢出産と向き合い、産後も子供とともに元気でハツラツとした生活を送りたいですね。
~まとめ~
「高齢出産のリスク」「卵子の老化」というのは、不安な気持ちにさせる情報ではなく、こういう情報を事前に知っておくことで、「早めに考え行動するきっかけのための知識」だと筆者は考えています。夫婦ともにブライダルチェック(今後の妊娠を目的とした検査)をし、不妊治療は早めに始めるべきですし、妊娠前から葉酸を摂取することも大切です。毎日規則正しい生活をし、食事バランスを考える、ストレスをためない、体重管理をしっかりとする、身体を冷やさない等を意識して生活をすることも重要です。
~筆者の体験談~
35歳で1人目を出産し、現在3人目を妊娠中の筆者ですが、振り返ると30代前半は仕事が忙しく、いつかは子供がほしいなぁ…くらいにしか考えていませんでした。ただ生理不順もあり、たまたま大きな病院で検査をしたところ、生活習慣を改め、薬を飲みながら生理周期をきちんと戻したほうが良いとアドバイスされました。それからは、栄養バランスを考えた食事(20代のころはダイエットしていたことも生理不順になった原因でした)、規則正しい生活を心がける等を意識し、妊娠・出産をすることができました。しかし、1人目の妊娠中はフルタイムでの忙しい仕事でしたので、残業も多く、つわり、仕事、満員電車のストレスが相当辛かった記憶があります。ちなみに逆子が最後まで治らず…でした(逆子の原因は不明と言われていますが、母親のストレスも一因にあると言われているそうです)。今思うと自分の体力を過信して少し頑張りすぎていたのかもしれません…。
これから妊娠を希望する方は、早めに自身の体と向き合いながら正しい知識を理解し、後から後悔することのないよう、ベストと思う判断で納得して妊娠・出産に望めるようライフプランを考えて頂きたいと思っております。
そして何より、女性の社会進出が増えてきている今、仕事をしながらも子育てがしやすい世の中になってほしいと心から願っております。