冬が近づくと、毎年気になるのが「インフルエンザ」。インフルエンザの予防接種の時期になると、毎回話題に上がるのが『卵アレルギー』についての疑問です。これは、小児科でもお医者さんが頻繁に聞かれる質問なのだそう。
インフルエンザのワクチンはたまごを使って製造されています。そう聞くと、卵アレルギーがあるうちの子は大丈夫なのだろうか…と、受けるのをためらってしまいますよね。
卵アレルギーがあるお子さんはインフルエンザの予防接種を受けても大丈夫なのでしょうか? 今回は、卵アレルギー患者の子どもはインフルエンザの予防接種を受けられるのか、インフルエンザのワクチンに含まれるたまごの量、アメリカでの対応や日本のワクチンのこと、インフルエンザの予防接種が出来ない人や場合などについて詳しくご紹介します。
卵アレルギーだけど、インフルエンザの予防接種してもいいの?
日頃から食べ物には気を付けているけれど、接種を推奨されているワクチンに避けなければいけない成分が入っていると言われたらどうしていいのかわからず不安になってしまいますよね。症状を持つ人は、そうでない人と同様に受けても良いのでしょうか。
予診票には、卵アレルギーについての質問項目がある
予防接種は、受ける前に簡単な質問に答える予診票が用意されています。インフルエンザ予防接種の予診票にはアレルギーに関する質問の項目が設けられているため、このような項目があると「やはり警戒しなければいけないのではないか」と身構えてしまいますよね。
たまごを使用して作られたものである以上、医師の方でも患者の状態を確認しておく必要があります。受けられなくなるかもと考えて虚偽の回答を書くのは絶対にやめましょう。
以前は卵アレルギーだとインフルエンザの予防接種が出来なかった
どうしてこのような質問が繰り返されるかというと、以前までは「受けてはダメ」と言われていた時期があったからです。そのため、過去にその話を聞いて避けていた人は今でもこのような印象を強く持っている可能性があります。
しかし調査が繰り返される中で、現在ではほぼ心配ないとされるようになってきました。
卵アレルギー持ちでもインフルエンザの予防接種は可能
結論から言うと、卵アレルギーの人であっても受けることは可能です。ただし、部分的にではなく全身に症状が出たという経験があったり、極少量でもアナフィラキシーショックを起こす可能性があるような重篤な患者である場合は、念の為医師と相談してから決めた方が良いでしょう。
少量なら食べても大丈夫という人は、接種による反応の心配はまずありません。安心してくださいね。
ほとんどの人はアレルギー反応を起こさない
過去に接種した人の報告からも、ほとんどの人は予防注射でアレルギー反応を起こすことはなく、安全であると考えられています。
ただし、100%何も起こらないという訳ではありません。気になる場合はかかりつけ医とよく相談して決めましょう。
インフルエンザのワクチンってどうやって作るの?
インフルエンザのワクチンは、鶏のたまごを使用して作られています。
ウイルスが生きた細胞に感染して増えるという性質を利用し、37度に温めた受精卵にウイルスを注入して増殖させます。それを精製し必要な添加物を入れワクチンとして製造します。そのため極微量ではありますが、卵の蛋白成分が含まれているのです。
インフルエンザのワクチンに含まれている卵の量は?
一般社団法人「日本ワクチン産業協会」の発表(2018年版)によると、日本国内で製造されているものに含まれる卵蛋白量は、1ml当たり数ng(ナノグラム)程度のようです。
ng(ナノグラム)とはmg(ミリグラム)の1,000,000分の1の量で、mg単位でアレルギー症状が出る人であってもng単位で症状が起こることはまずありません。もしこの量で発症するような場合は日常生活も非常に困難なことが予想されますので、ほとんどの人は心配ないと考えて良いでしょう。
アメリカでは卵アレルギーでも出来ると決められている
アメリカでは多くの面で日本よりも新しい医療が提供されています。
日本よりもワクチンの中に含まれる卵の量が多いアメリカでも、アメリカ小児科学会により、2017年から『症状を持つ子どもでも接種はできる』と取り扱いを変更しています。
アメリカ小児科学会の調査によると、症状を持つ子どもに摂取したケースも、そうでない子どもに摂取したケースも、また他の接種とした場合と比較しても、アナフィラキーショックを起こす確率に変わりはなかったそうです。
アメリカでも、2010年頃までは症状を持つ患者には打たないようにと定められていました。打っても大丈夫と判断されるようになったのは比較的近年の話なのですね。
日本のインフルエンザワクチンは卵の量が特に少ない
WHO(世界保健機関)で定められている「ワクチンに含まれる卵の蛋白量」は、1mlあたり1000ng(ナノグラム)未満です。これは日本で作られているものの1000倍に当たります。
ですが、日本よりもワクチンに含まれるたまごの量が多い海外でも、接種は安全に行われています。ということは、日本でこの症状の心配はほとんどないと言って良いでしょう。
「インフルエンザのワクチンがアレルギーを起こさない」訳ではない
ここまでの話を読めば、「どんな人でも安全に受けられる」と思う方がほとんどではないでしょうか。実際、これが原因で卵アレルギーを発症したという報告はほとんどありません。
ただ、平均140万本に1回程度の割合でアナフィラキシーショックを起こすというデータがあります。
2011年に全国的な調査が行われたところ、そのアナフィラキシーショックの原因はなんと卵ではなく、保存料の役割として含まれている「フェノキシエタノール」が症状を引き起こした原因ではないか、という結論になったそうです。
そのため、「100%アレルギー症状が出るわけではない」と断言することは難しいのです。
インフルエンザの予防接種ができない人は?
ほとんどの人は予防接種を受けることが出来ます。ほんのわずかなら食べても大丈夫という人であればまず問題ありません。
ただ、過去にこれが原因でアナフィラキシーショックを起こしたことのある人は、ワクチンの添付文章に「受けるのが適当でない者」として明記されています。
インフルエンザの予防接種が出来ない場合
予防接種を受けることが出来ない、あるいは受けないと決めた場合は、以下の事を頭に入れておきましょう。
- 発症(または発熱)したら、すぐに抗インフルエンザ薬を服用する。
- 感染者と濃厚接触した場合、あるいはその可能性がある場合は、抗インフルエンザ薬を予防としてすぐに服用する。
ほとんどの人は心配ないとはいえ、重篤なアレルギーのある人は念の為接種を控えることもあるかと思います。その際は、自分はもちろん周囲の人に疑わしい症状が表れていないかを意識しながら過ごしましょう。
卵アレルギーの方へもインフルエンザの予防接種をしています
アレルギー患者の人は体内に摂取するものにとても気を遣って生活しなければいけないため、たまごを使用したものに対して敏感になるのも無理はありません。重症化しやすい、体の小さい子どものことなら尚更でしょう。
しかし、ワクチンに含まれているたまごの量はごくごくわずかのため、余程重度の症状を経験した人でない限り注射での症状を心配することはありません。
予防接種は、自分だけでなく周囲を含めた集団感染を予防する大事な手段の一つです。万が一感染者が出た際に自分や家族の症状を重篤化させないためにも、是非積極的に受けましょう!